夏乃日記 vol.12 私にもわかる
私はおしっこ我慢しないけど、お姉ちゃんはする。
そして、我慢してるのは、私にだってすぐにわかる。

プーというクラクションにびっくりして、そちらを見ると、
高そうな車から男の人が、ハンドルを背にし、
ものすごく出づらそうに、不自然な体勢で降りて来た。
クラクションは自分のお尻で鳴らしちゃったみたい。
恥ずかしそうにしていた。
なんでそんな格好になっちゃったのか。
あのクラクションのせいで、こうしてあの人の事をいまだに考えている。

季節の変わり目や週の終わりなどは、大人でも疲れる。
小春の場合は疲れ果て、何でも理由を作って、怒って大暴れする時がある。
絶叫に近い声で泣きわめく。
受け止めきれずに私も不機嫌になって、放っておいたりすると、
ついて回って泣き叫ぶ。
地獄絵図。
そこへ夏乃が一緒にはいはいでついて回り、
私の足につかまり立ちしてぴょんぴょんしてる。
「祭りだ、祭りだ、わっしょいわっしょい。」
御神輿を担ぐ人のように晴れやかで楽しげ。
深刻ぶることないわ、と笑ってしまう。
今度小春が大暴れしたら、お祭りだと思う事にしよう。
我が家で一番小さな人は、結構大きな役割を果たしている。


朝、リビングと寝室にしている和室の間のふすまがちょっと開き、
小春がおしりから出て来た。
大笑いして飛びついて抱きしめた。
本人は笑わせるつもりはなかったらしく、私の反応にびっくりしながらもうれしそうだった。
それ以来、毎朝おしりから登場する。
…が、このおしり、ガラス細工のように繊細にできており、
出て来る前に目が合っちゃったり、私の居る位置が違ったりしただけで、
泣いて怒る。
めんどくさい。
めんどくさいが、やっぱりかわいい。
毎年4月に入ると、ふすまは取り払うのだけど、
今年はもう少しこのままにしとこかな。

はいはい、たっち、お返事。
何だってできるなっちゃんなのに、仰向けにするとずっとそのまま。
寝返りだけを忘れてるようで不思議だった。
でも夜中に小春と遊びたくなっちゃった時は、勝手に寝返りして私を乗り越えて行ってた。
寝返り「できない」んじゃなくて、「しない」だけだったみたい。
小春は生後6ヶ月で「ワンワン」と言ったけど、なっちゃんは言わない。
でもなっちゃんは目を見て笑うのは小春より早かった。
なっちゃんの好きな順番で、好きな速度で、成長するのね。


小春が決めた期限まであと1ヶ月だった。
「3歳になったら」は軽く破られ、「れんげさん(保育園の進級)になったら」に期待していた。おっぱいへの執着は日を追う毎に増し、夜は新生児並みに2時間置きに飲んでいた。小春におっぱいをあげる事が、泣きたくなるほどつらい日もあれば、平気な日もあった。私の身体を心配して断乳を奨める夫の言葉も、耳に入らなかった。他人からの「やめなよ」という助言も「自分からやめるまでがんばって」という励ましも疎ましかった。最初の卒乳の後、寝かせるのが大変だったのも頭にあったし、『「○○になったらやめる」と自分で決めてやめました』というのに固執していたのもある。「待てる親」になりたかったのかも。なんとなく、小春へのおっぱいが続いていた。
「小春も家族なんだから、ちゃんと話し合おうよ。」
この夫の言葉でようやく決心が着いた。「待つ」ことで小春のことを尊重している気分でいたけど、家族として本気で話をする方が人間として対等だと思った。
「お母さんは、小春におっぱいをあげることで身体がとても疲れている。小春のこと、大好きでいっぱい一緒に遊びたいから、もうおっぱいをやめよう。」というような話をした。小春は横を向いて返事をしなかったし、その夜は2回起きておっぱいを求めて泣いた。でも翌日からは、文句(かわいい)を言うだけになり、ちゃんと眠れるようになった。朝までぐっすり。
今回の卒乳で、私も少しだけ親になれた気がする。

小春ちゃん、永きに渡りご愛顧頂き、ありがとうございました。(店主)
暮れから正月にかけて約1ヶ月くらいだろうか。私は困っていた。
保育園に迎えに行くと決まって小春が不機嫌で、時には怒って泣いたりしてた。
夏乃に対して滅多に嫉妬することのない小春だから、それが屈折した形で出るのかもしれない。私に甘えてるのだろう。受け止めてやらなくては…。でも毎日となると結構イヤになる。
時には私の方が機嫌悪くなったっきり戻れなくなったり、それで落ち込んだり。
お迎えは、私にとっては魔の時だった。
だけどその後、他の子ども達の様子から、小春の不機嫌の理由が判明。
もっと保育園で遊びたかったのだ。
小春の事が大好きなんだよ〜ぎゅ〜なんて陶酔してた自分が恥ずかしい。
子どもとつきあうには、おおらかさと謙虚さが必要だ。
ああ、ちょうど2つとも、持ってないわ。

朝、ゴミ捨ての時、わたしのともだちの後ろ姿をみかけた。
エレベーターに乗らず階段で上に戻りながら、後ろ姿を見送った。
ふらふらのろのろ。
驚く程遠ざからない後ろ姿だった。

「小春ちゃん、お母さんの事大好きだから後ろに行きたい〜」
あんまりしつこく言うから、偉そうな提案をした。
「じゃあ、お母さんの事考えながらお歌でも歌ってればいいじゃん。」
ため息まじりに小春がつぶやいた。
「…お母さんの事考えてたら、ま〜た好きになっちゃったよ〜」

目が合う度に奇声を発しちゃうくらい、夏乃がかわいい。
夏乃で困った事がない。
泣いてもかわいい。うんちしてもかわいい。息してるだけでかわいい。
二人目の余裕。
道なき道を切り拓いてくれた小春ちゃんのおかげ。
妹である私は、自分の姉にも感謝の気持ちが湧いて来た。
何かおいしい物でも送りたくなる。
ま、実際送らないのだけどもね。


私が赤ちゃんだからかな。
大抵の場合、お姉ちゃんが泣く理由がわからない。

あんまり泣く時はなぐさめます。↓
http://enikki.cocolog-nifty.com/iriephoto/2008/02/vol140_e50c.html
すっきりしたのは母さんだ。

今やピンセットではなく、強引に指でつまんで取ってます。
(小春時代→http://enikki.cocolog-nifty.com/enikki/2004/12/post.html)
赤ちゃんは鼻毛がないから鼻くそがとれやすくて面白いんです。(母)
保育園のお迎えの時、年長組の奈々ちゃんが私に言った。
「ね〜ね〜小春ちゃんのお母さん!あのね、小春ちゃんね、
あ、小春ちゃん、言っていい?」
うなずく小春。
「小春ちゃんってさ、全然しゃべれないじゃん、
でもね、本当はすっごいしゃべれるんだよ!!」
エンジンかかるの遅くて恥ずかしがり屋の小春は、通りすがりに挨拶する程度の人には、ほとんど言葉を発さない。
奈々ちゃん、ベラベラしゃべる本当の小春をどこかで目撃したんだろうな。
びっくりしたに違いない。

最近小春は怒りっぽい。
アメの包み紙を自分で捨てろと言われて、ぶつぶつ文句を言い始め、
最後には私たちを睨みつけながら言った。
「じゃあ、もう小春ちゃん、傘さしちゃうからね!
雨、降ってないのにさしちゃうからね!」
お口も達者になった小春に、大人げなく言い返したり、イライラしたりすることもしばしば。
だけど、やっぱりかわいい小春。
もう大人になっちゃったのかと思うくらい理路整然としている日もあれば、
抱きしめてチューしたくなるくらいかわいい事をいう日もある。
小春の1年の成長は私の20〜30年分に当たるのかも。
行きつ戻りつしながら確実に成長していく小春の側で暮らせるのは嬉しい。
